この動画と文章は、生徒さん向けのレッスン内容確認とKindle本の補足です。切歯窩と上咽頭の響き、アッポッジョと声の闘争及び喚声点(チェンジ)のための相互抑止発声について書いています。
1 声の焦点を設定して良く通る声を出すときは、切歯窩を狙って声を出すと良いです。切歯窩から続く切歯管周囲の硬質な骨が鼻腔を含めた声道の響きを輝かせます。
2 雑音的な母音の練習です。イエアオウは自然に発声するだけでは練習として不十分です。母音に喉頭(声帯、仮声帯、喉頭室)の雑音を混ぜて、その雑音を細かく均質にする練習が必要です。このときの細かい雑音が声の輝きの素になります。
3 呼気"2"と対立"49"による声の闘争はアッポッジョにおいて特に重要です。支えを49として認識し、常に呼吸筋を拮抗状態にしておく必要があります。呼気は2だけ必要です。感覚的に非常に少ない息を声に変換することがアッポッジョのある歌唱では大切です。
4 支えのある声で歌うときは、吸気筋と呼気筋の相互抑止による窒息的な感覚が必要です。特に高い声を出すときは、息をほとんど止めているような”窒息感"を含む発声が大切です。
5 喉頭圧縮及び声道圧縮による声門下圧の維持です。喉頭や声道は自然にしていると息が余計に流出します。発声時の最適な喉の広さは、狭さから調整します。最初から広く喉を開けて練習をするとそのまま不必要に広がってしまいます。開けざるを得ない程度に開けると良いです。
6 声は首から腰までの背中で支えます。重い物を持つときの背中の筋肉の張りを使います。また、頭部は少し前方に押し出しつつ、背中の筋肉で後方へ引っ張ると良いです。普通の頭部の位置を双方向からの力で意図的にとどめると良いです。
7 声の高低は一定の値を維持する感覚で練習すると良いです。音程を不変のように感じると良いです。低くなるときも高くなるときも一定を維持し、感情や声の”闘争状態”を基礎にすると良いです。
(ポイント)
発声は空気の圧力を制御する物理的な作業です。声に心を込める意識があると呼気が多くなってしまい、支えの無い息漏れ声になる場合があります。発声練習時は、”声の闘争”の結果による無心が大切です。
(参考文献)