声楽と合唱及びボーカルのためのボイストレーニング講座
《最少呼気発声で練習する》
よく通る声を出すときは、出来るだけ少ない呼気(吐く息)で声を出すと良いです。その際は、息を普通に吸い、非常に少なく吐くことが大切です。息を止めているような感覚に近くなります。
息は多く吸うと負荷がかかります。多い吸気は、それ自体が肺や胸郭全体を不要に緊張させ筋肉を固めます。また、吸うときの疲労と吸った状態を保持するときの疲労が余計にかかります。
吸うときの呼吸は素早く行い、普通の量あるいは普通よりも少しだけ多めに吸う意識があれば良いです。吐くときの息を制限することが重要です。この制限は、胸郭と脇腹や背中及び喉頭周辺の筋肉で行います。呼吸の制限は筋肉の最適な緊張が大切です。筋肉を体の内側から外側に向けて膨らませるようにして使い、息をなるべく出さないように食い止めつつ声を出すと良いです。
(ポイント)
・ほぼ一瞬でブレスをする(時間をかけて息を吸うと、途中で疲労して失速するため良く吸えない。また余計な緊張にもつながる)
・吸うための筋肉を発声時にも使い続ける(息を吸う力と吐く力を支え合わせて、息を止める力を意図的に生み出すと良い。止める力は同質・同量で生み出す。何もしない止まった力ではなく、逆の力同士で支え合った結果としても“止め”が大切)
・お金を借り過ぎると返済時の負担が非常に大きくなる。これと同じで、呼吸も息を吸い過ぎると負担が大きくなる。息を吸うことと息を保存することのために筋肉が不必要に緊張してしまい、効率的な呼吸が出来なくなる。息は声に必要な分だけ素早くつかみ取ると良い。
《上前歯の付け根に声の焦点を感じて声を押し付ける》
良い声を遠くに飛ばすときは、声の焦点を硬口蓋に感じながら声を出すと良いです。声の焦点を硬口蓋に設定し、声を硬口蓋に押し付ける、あるいは硬口蓋を声で持ち上げるようにイメージすることが大切です。
口腔は全体的にやや圧縮し、口腔の前側に狭さを感じると良いです。この狭さが広がってしまうと息が太くなってしまい、声の焦点がぼやけてしまいます。声の焦点を意識するタイミングを逃すと飛ばない声になります。ちょうど良い一瞬と一点を探す必要があります。ラジオのチューナーを微調節するようなイメージで声の焦点を探すと良いです。
(ポイント)
1 腹部の横と背中側を適度に張り詰めるようにして息を吸う
2 腹部の横と背中側の張りを維持する
3 張りを維持しながら上前歯の付け根に当てるようにして声を出す(硬口蓋前方か硬口蓋の中心が良い)
4 声を出している間も腹部の横と背中側はしぼませない
5 声の焦点は小さく感じると良く通る声になる(小さいと鋭い声になり、大きいと柔らかい声になる)
声の焦点は上前歯の付け根に感じることが大切です。口腔は適度に圧縮し、口腔前方の舌と口の天井(口蓋、特に硬口蓋)との距離は少し狭くしておく必要があります。これが最適な狭さよりも広がってしまうと、焦点のぼやけた声になり良く飛ばない声になります。狭すぎると潰れた声になってしまうので、これも良いとは言えません。
母音や音程に最適な声の焦点を常に探し続けることが大切です。
ここの文章は、私が執筆したKindleのボイトレ本の内容から一部を抜粋し、改変したものです。
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