支えのある声を出す基礎と母音の練習及び脱力の解釈
《支えについて》
良い声で歌うときは支えが必要になります。腹部の横側や背中側に圧力を加えて、声を作り出すための呼吸を維持することが大切です。腹部を中心に、全身の後ろや前、右や左、上や下に向けて、適度に力を込める必要があります。力を「すべての方向」で支えて安定を保つことが大切です。歌うときの支えは、全身の力と力による「支え合い」です。支え合いの中で、どちらかの力が弱まると、「力み声」や「揺れ声」などの偏りを生みます。歌うときは、息を吸ったときの腹部と胸郭、及び背中の適度に張った状態を維持しながら声を出すと良いです。
声の支え(アッポッジョ)は筋肉と感情の拮抗で作ると良いです。筋肉の場合は、吸気筋と呼気筋の拮抗。感情の場合は正の感情と負の感情、あるいは善と悪です。
支えのそれぞれの力は、逆向きの力と力の対立で強化させます。逆向きの力が合わさったとき、それらの力は無くなるわけではありません。お互いの力で支えられたときに楽に感じても、力を抜いているわけではありません。それらの逆向きの力を閉じ込めつつ声を出すことが支えでは重要です。
《母音(イエアオウ)について》
ボイストレーニングはすべての母音で行う必要があります。「ア」の母音だけでは母音のバランスは偏ります。よく通る声の練習をする場合は「イ」か「エ」の母音で練習すると良いです。また、母音を声に出すときの舌と口腔の形は、イエアオウの順で変化します。母音の発声では基本的に舌は下前歯の裏に軽く付けておきましょう。得意な母音から始めて、苦手な「母音」や苦手な「母音の組み合わせ」がなくなるように、くり返し練習しましょう。
母音と子音の練習をするときは、母音にのみ「音の高さ」があり、子音は破裂や摩擦の「音」そのものと解釈すると良いです。子音は母音よりも少し早めに出すことが大切です。子音と母音が同時に拍の頭に来るように出すと、母音が良く響くタイミングを子音に盗られる形になってしまい、最適な響きを逃すことになります。
発声練習は日本語よりもイタリア語やドイツ語のように行うと良いです。「マ」で練習する場合は「マ」ではなく、「Ma」のように練習すると良いです。「Ma」の「a」の母音で拍の頭の音をつかむことが大切です。
歌の練習では歌詞の中から母音のみを取り出して練習することも有効です。
(母音「イエアオウ」のポイント)
母音は舌の面と口蓋(口の天井、前側が硬口蓋、後ろ側が軟口蓋)との距離や空間の広さ・形で作られます。口の形は補助的なものなので、あまり変化させない方が安定した声になります。母音の練習をするときは、母音にのみ音の「高さ」があり、子音は破裂や摩擦の「音」そのものと解釈すると良いです。発声練習は日本語ではなく、外国語のように行うと良いです。
《脱力について》
歌うときは結果的な脱力が必要です。これは声に必要な筋肉が過不足なく備わり、お互いの筋肉が連携、また支持し合うことが前提となります。筋肉同士が支え合うのでお互いの負担は軽減され、あたかも脱力したかのような感覚になります。ただ力を抜けば適切な脱力になるというわけではありません。力の支え合いによって生じる負担の軽減という「脱力感」が、歌唱時にふさわしい自然な呼吸・姿勢となります。
ここの文章は、私が執筆したKindleのボイトレ本の内容から一部を抜粋し、改変したものです。
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